安倍政権打倒という大義のために「名を捨てて実を取る」。そう言って、自ら率いる民進党を事実上消滅させ、希望の党への合流を目指した前原誠司代表。自爆と見まがう騒動が選挙の構図を変えた。ここから何を読み取ればいいのか。
「あれ、誰が演出したんだろうね。1人で会見するって。世間のね、同情票が流れるよ」
元衆議院議員の自民党閣僚経験者は、立憲民主党の結成表明会見に臨む枝野幸男氏(53)を見ながら、そうつぶやいた。20年続いた野党第1党が一夜にして消滅する。民進党の前原誠司代表(55)による「自爆」と見まがう分裂騒動で、大多数の仲間が希望の党への合流を決める中、枝野氏はひとり新党を立ち上げた。
この会見が行われた10月2日の夜、枝野氏に単独インタビューした。枝野氏は前原代表と袂を分かった理由について、「認識の違いがあった」と話した。そして、かなり早い段階から「いくつかの可能性がある」と「新党」の可能性を模索していたことをうかがわせた。
●民進党の泣きどころ
枝野氏に聞いた。民進党が希望の党に合流するという話を聞いて、何を思ったのですか?
「個人的には信じられませんでした。両院議員総会の前日、前原代表から初めて合流の話を聞いた時も、にわかには賛成できないと答えました」
では、なぜ両院議員総会では異論が出ず、「合流」で一致してしまったのでしょうか?
「それなりのプロセスを経て代表に就任した前原さんが、自信を持っておっしゃる以上、期待をして待つのが組織人としてのあり方だと思う」
前原氏は合流に先立ち、民進党の支持母体である連合の神津里季生(こうづりきお)会長(61)と共に希望の党の小池百合子代表(65)の元を複数回訪れている。両院議員総会では、希望に合流後も連合からの継続した支援を取り付けている、と説明した。出席した議員の証言によると、前原氏は「ここにいる全員を連れて行く」と明言。何度も「仲間」という言葉を繰り返したという。
政治家の理念と組織の論理のはざまで、多くの民進党議員が揺れた。安倍政権誕生以降、党内の主流派を占めたのは、自民党の「伝統保守」に対して「改革保守」。戦後民主主義を基軸とした、自由、平等、平和を主張する「リベラル」は党の主流から外れた。合流を希望する民進党議員に小池氏が突きつけたのは、「安保法制の容認」と「憲法改正」。この二つの政策は、民主党時代から党内が一致できない基本政策で、民進党の「泣きどころ」だった。