そもそも前原氏は、松下政経塾出身で「改革保守」の急先鋒。彼をよく知る政治ジャーナリストは、

「選挙手法が極めて自民党的なんです。選挙区をいくつかに割り振り、地域の有力者を束ねて、組織票をまとめる。街頭演説、ビラ配りなど労組的な選挙運動は嫌いました」

 と語る。性格は純粋で実直。情にほだされやすい。小池氏は前原氏率いる民進党から、自身の理念に共鳴する保守派だけをはがしとることに成功した。

●下野してから右傾化

 2015年、安保法制に反対する国会前デモの「顔」として学生団体「SEALDs(シールズ)」を率い、参議院で開かれた中央公聴会で公述人を務めた大学院生の奥田愛基氏(25)は、民進党が希望の党に合流すると報じられた直後、ツイッターでこう発言している。

「今だから言うけど、自民党の鴻池さんや周りの関わった人たちが、2年前の安保法が止められなかった理由を市民の動きがどうこうではなく、民主党の中に賛成派がいたことが最大の要因だったと言っていた。止める方法はあったのに彼らがそうしなかった、と結構真顔で言ってた。本当だったのかも知れない」

 奥田氏が言う「鴻池さん」は、当時の鴻池祥肇参議院特別委員会委員長。投稿の内容が事実だとすれば、この時点で民進党は事実上、政党組織としての体をなしていなかったことになる。

 民進党内の保守派の存在は、同党を長年研究し『民主党政権失敗の検証』などの研究で知られる中野晃一・上智大学教授も指摘している。

「12年、民主党政権時代が終わり、再び、安倍自民党が政権を握って以降、民主党は結党以来、最も右傾化した。『原発』『TPP予備交渉』『消費税増税』などを容認する保守派しか、リーダー層に残らなかったんです」

 もう一度政権を取るには、保守中道の自民党支持者を取り込まなければならないからだ。

 しかし、立憲主義を無視した「特定秘密保護法」「安保法制」をめぐる安倍政権の手法には、民主党(当時)議員の多くが疑念を抱いた。結果、安倍政権の強烈な右傾化に対し、野党第1党として対決姿勢を鮮明にすることで、党の支持率を回復させようという力学が働いた。

 民主党の安倍政権との対決姿勢を後押ししたのは、国会を取り囲んだ10万人を超える市民。党内のさまざまな意見の調整に奔走し、民主党として安保法制の採決に反対することを決定した、当時の政調会長、細野豪志氏(46)も、国会を取り囲むデモに参加して、こう断言している。

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