失敗した経験が豊富な人とそうではない人が会社に入ると、その差は歴然だ。順風満帆だった人は失敗するまいとして、大きなプロジェクトや責任ある仕事を引き受けたがらない。そればかりか、仕事でトラブルに見舞われると激しく落ち込んだり、うまく収拾をつけられず、回復にも長い時間がかかる。ひどいときは会社を辞めることで自分を罰したり、現場を回避する方法を取ることもある。

 一方、失敗と事態の収拾を何度も経験したことのある人は、「こういうときは、すぐにミスを認めて謝罪をすべきだな」とか、「次はもっとうまくやろう」とか「世の中には変わった人が多いから、運が悪かったと思おう」と考えて忘れるなど、さまざまな方法で解決して前に進む。

 若手社員の失敗はほとんどの場合、会社に大損害をもたらすことはない。ジュニアクラスやシニアクラスに昇進しても、その等級で耐え得る仕事を任されているのだから、自分の失敗で会社が倒産したり、地球が滅亡したりすることはない。

 ただし、その失敗によって自分がくじけてしまう恐れはある。そうならないために、打たれ強さを身につけよう。

【2】振り返って反省する

 成功という結果よりも大切なのは、過程を振り返ること。なぜ失敗し、なぜ成功したのかを振り返ってシステム化しておけば、次の成功の確率を高めることができ、失敗の繰り返しを避けることができる。持続可能なシステム作りは、個人のキャリアだけでなく、会社の成長にとっても重要だ。人材やプロセス、チームの役割分担、法規、市場の需要、価格など、失敗の原因がどこにあったのかを確認したうえで再挑戦すれば、成功の可能性が高まる。

 ところが、失敗の原因を誰かのせいにしてしまう人がいる。たとえば大学入試に落ちたときに「先生があそこを受けろと言ったじゃないですか」と言ったり、会社でなぜこんな事態になったのかと責められて「部長がそうしろとおっしゃったじゃないですか」と言ったりするケース。私もキャリアに関するアドバイスを頼まれて、あとから文句を言われることがときどきある。

 こうした態度は、失敗の原因を正しく振り返ることができなかったときに現れる。自分のやるべきことに主導的に取り組んだのではなく、誰かに引きずられる形で行ったせいだ。しかも、なぜ引きずられているのか、どこへ行くのか、結果はどうなるのかを考えすらしなかったことが原因である。こうした失敗は自分事ではないから、経験値を上げるための役には立たない。プライドが傷つくだけだ。自分で引っ張っていくにしても、引きずられていくにしても、しっかり気を引き締めて、バランスを崩さないように注意したい。

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傷つくことへの怖さが和らいでいく