M資金とは、連合国軍総司令部(GHQ)が旧日本軍から押収した金品や財宝などを財源にしたとされ、「10兆円を無担保で貸し出す」などの架空の巨額融資話で紹介料をだまし取る手口の詐欺。当時GHQの経済科学局長だったマーカット少将の頭文字から名付けられている。時代とともに財源がユダヤ系財閥や、アラブ産油国の資金などと変遷しているが、手口が酷似しており「M資金詐欺」と総称される。古くは70年、全日本空輸の社長がM資金から3千億円の融資を受ける念書を作成して辞任に追い込まれ、78年に自殺した俳優の田宮二郎さんもM資金絡みの金銭トラブルに巻き込まれていたとされる。その後も数年に一度のペースで金融ブローカーや詐欺グループが摘発されるM資金絡みの事件は起こり続けた。

 最近は変形バージョンも多彩だ。大阪市の建設会社経営の男性(52)が数年前に持ちかけられたのは、真っ黒く塗りつぶされた「米ドル札」の購入だった。

「イラク戦争に派遣した将兵に持たせていたという触れ込みで、敵に捕らわれて奪われてもそのままでは使用不能だが、特別な試薬を使うと塗装が取れるとのことでした。真っ黒で画用紙のようにゴワゴワした手触りで、大きさも不揃いでした。当時信用していた元首相の私設秘書が『これがブラックダラーです。もうすぐ大量入手できます』と興奮気味に話していたので多少は期待したのですが」

 結果は当然、大うそ。この男性は、全く違うルートの米ドルの贋札の購入を勧められたこともあったという。

「全く別の政治家の秘書の案内で、目隠しされて車に乗せられ、マンションの部屋に入って目隠しを取ると、未切断の贋札のシートが身長ぐらいの高さまで積んであり、透明のビニールで梱包されていました。100ドルの贋札だったと思いますが、あまり近くで見せてくれなかったので出来栄え自体は判別不能でした。何週間かして、その贋札の塊を知人に億単位で買わせたとして首謀者が警察に逮捕されたニュースを見て笑いました」

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