●山下財宝で一攫千金?
山下財宝の場合、日本軍が太平洋戦争末期に「丸福」のような金貨数種類を大量に鋳造、実際にフィリピンに持ち込んだことが信憑性を高めた。金貨は散逸したが、99年に東京都港区のコインショップ「ダルマ」が米国の業者から一挙に168枚の丸福金貨を入手し、話題を呼んだ。同社によれば1オンス(約31.1グラム)の金貨は当初、14万~18万円程度で取引されたが、「福」の字を好む中国人コレクターの参入で相場が30万~40万円まで上がり、現在はほとんど海外流出しているという。
そして、一攫千金を夢見て宝探しに血道を上げるのは、フィリピン人たちだ。不正蓄財を指摘されたマルコス元大統領のイメルダ夫人が90年代に「夫は山下財宝を発見して財をなした」と発表したことも混乱に拍車をかけた。過熱する宝探しにフィリピン政府は07年、保証金や手数料を払ったうえで許可制にする指針を策定したが、いまだ熱気は冷めやらない。怪しげな日本語の手描きの地図を頼りに、洞窟や山間部でシャベルやツルハシを振り上げる人たちは後を絶たないのだ。(編集部/大平誠)
※AERA 2017年9月25日号