ことし5月に飛び込んできた「東日本でカール販売中止」の衝撃的ニュース。言葉から味覚まで、東日本と西日本は何かと違いが語られるが、なぜ東日本でのみ販売中止なのか? 明治の担当者を直撃した。
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京都府出身のAさんは大学から上京し、東京都出身の妻と結婚した。結婚して、10年。小学生の娘の教育にも熱心な妻に大きな不満はないが、新婚当時からモヤッとした違和感が消えない。それは、関西人のAさんと関東人の妻の「東西ギャップ」。ちょっとした言葉遣いやふるまいに対して、夫婦の感じ方がことごとく違うという。
たとえば「ハシ」。Aさんが「ハシを取って」と言えば、「端を取るってどういうこと?」と聞き返される。「箸」のことだと指摘すると、妻から「ここは東京なんだから、標準語で話してよ」とイラッとされる。それを聞いたAさんもムッとする。家族でもんじゃ焼きを食べに行き、「やっぱり、くいで(食べごたえ)がないなあ。なんでこれで980円もすんの」と軽口をたたけば、「あなたは高いとか安いとか、本当に貧乏くさい」とイヤな顔をされる。笑いのツボや味付けでも、ちょっとずつ「ずれ」が蓄積されていく。Aさんがぼやく。
「僕はそういう違いも新鮮でしたが、子どもが生まれた後は『子どもがマネしたらどうするの』と妻は本当にイヤみたいです。どっちが正しい、ということはないと思うのですが……」
意図せずに「東」と「西」を意識させられることもある。ことし5月、東日本の住人に、ショックな出来事が起きた。製菓大手の明治が、スナック菓子「カール」の販売を関西地域(滋賀・京都・奈良・和歌山)以西の西日本に限定すると発表したのだ。9月以降、福井、岐阜、三重県以東の東日本ではカールを食べられなくなる。