小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は6月20日発売の『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。近著に小説『ホライズン』(文藝春秋)。最新刊は6月20日発売の『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(講談社)
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 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 もしもカナダのトルドー首相がフランスのマクロン大統領とアイルランドのバラッカー首相と並んで壇上に立ち「ご覧の通り、我々3人には共通点があります。男で、70年代生まれで、そして一番大事なのは、3人ともイケメンだってこと!」と言ったら。いくら人気のリーダーでも、全世界がドン引きです。

 そもそも共通点として性別と年齢と容姿をあげるのは、他に対話のできる共通点がないと言っているようなもの。相手は、お前は無能だと言われたと感じるでしょう。

 ではなぜ稲田防衛大臣は、フランスとオーストラリアの女性大臣を前にして、笑顔でそんなことを言ったのでしょうか。美人だと言えば喜ぶだろうと思ったから?

 もちろん、自分の身体を愛し、誇るのは素晴らしいこと。でも見た目は、大臣の仕事とは無関係です。「美人過ぎるなんたら」がお馴染みの日本では、そうは思われていないのかもしれないけど。

 国防担当の女性大臣としては、稲田氏とフランスのグラール氏(6月20日に辞任)はそれぞれ国内史上2人目、オーストラリアではペイン氏が史上初。フランスは閣僚22人の半数が女性ですが、オーストラリアは22人中5人、日本は20人中3人です。もしあの場で共通点を強調したいのなら、ジェンダーギャップ指数111位の日本の女性閣僚として「女性がこのような重要なポストを占めていることを誇りに思う」という言い方もできたでしょう。でも稲田氏は「and most importantly, we are all good-looking!」とキメて、ニコッと笑いました。他の大臣たちの身体を公然と値踏みしたことに、気づいているのかな。会場の笑いに失笑が混じっていたことにも。

 ちなみにフランス国防大臣のグラール氏は、所属政党の公金不正流用疑惑で辞任しました。女性閣僚は新しさやクリーンさの象徴にされがちですが、やはり、性別で一括りにはできませんね。

AERA 2017年7月3日号