レズビアンで、慶應義塾大学大学院博士課程でジェンダー、セクシュアリティーを研究する中村香住さん(26)は、根底には「教育」があると指摘する。
●早すぎることはない
高校1年の時、中村さんは恋愛感情を持ったクラスメートの女性に告白すると、「絶交」を告げられた。好きとか嫌いではなく絶交にまで至ったのは、この女性は同性愛をどこかで「気持ち悪い」と考えていたからではないか。また、カミングアウトした女性から「私のことは対象にしないでよね」と言われ、傷つくこともあった。こうした、LGBTに関して否定的な発言をする人がいるのは、教育で適切な知識を身につけていないことも理由の一つだろうという。
「小学生でLGBTを教えるのは早すぎるという議論があります。セックスに関する話は早い遅いはあるかもしれないけど、少なくともセクシュアリティーについては、教えるのに早すぎるということはないと思います。幼稚園生でも初恋はあります」(中村さん)
教員や生徒、保護者などに出張授業を行うNPO法人「ASTA」(名古屋市)の共同代表理事で、愛知教育大学4年の久保勝さん(22)はこう話す。
「大学の教員養成課程でジェンダーやセクシュアリティーを扱う授業はなく、『LGBT』の『L』の字も習わない。教員がLGBTのことを知らないのは、ある意味、当たり前です」
5月、ASTAは愛知県内の小中学校の教員51人にLGBTに関するアンケートを実施。LGBTを聞いたことが「ある」と答えた教員は、半数以下の19人だった。
久保さんは、「アライ(ALLY)」と呼ばれるLGBTの支援者だ。大学に入って中学時代の同級生がゲイだと知った。当時、彼が周囲から「ホモ」とからかわれているのを見ても、何も言えなかった自分に無力感を覚えていた。教員養成の大学に進み、その原因が教職課程の「穴」にあることに気がついた。
●変わる教育の現場
LGBTは「いない」のではなく「見えない」だけ。見えなくしているのは教育だ、と。
昨年、学内にLGBTを支援する学生団体「BALLoon」を立ち上げ、広く外に向けLGBTの発信を行うため今年、NPOを設立。久保さんは言う。