「教育は循環します。教えられた子どもは教える側になっていく。LGBTに対する負の循環を断ち切り、社会を変えたい」
教育の改革は、現場からも少しずつだが起きている。
「LGBTって何だろう?」
3月上旬、神奈川県三浦市立初声小学校。6年生の担任の藤田健太郎教諭(27)は、画用紙に描かれたイラストを手に、100人近い児童を前に問いかけた。
「え~、何、何!?」
子どもたちは藤田教諭のほうに身を乗り出した。授業は、同校の及川比呂子養護教諭(57)の企画で実施された。
「小学6年生になると性自認が揺らぐ子を、今まで何人も見てきました。自分の心と体に違和感があることはおかしくない、周りに相談してもいいんだと伝えたかった」(及川養護教諭)
授業は45分、道徳の時間に6年生全員を集め行った。藤田教諭は6年生の担任ら4人とともに授業を実施。授業の後、子どもたちの意識は変わった。こんな感想が寄せられた。
「LGBTって知らなかった。すごくためになった」
「二つの性別の違いを知ることができてよかった」
授業前までLGBTという言葉を知らなかったという藤田教諭はこう話した。
「僕たちも、子どもたちの中にLGBTの子がいるかもしれないという視点を持つことができただけでもよかった。子どもたちが学校で伸び伸びと楽しめる配慮につながります」
教育が変われば社会が変わる。社会が変われば、心の壁はいつかきっとなくなる。(編集部・野村昌二)
※AERA 2017年6月12日号