子育て科学アクシス(千葉県流山市)で発達障害や不登校などの相談を受けている文教大学教育学部特別支援教育専修教授の成田奈緒子さんは、ある女性教師が発達障害の特性のある小学生に「あんたはレベルの低い人間なのよ! 薬飲めばいいのよ」と言う姿に驚いた。「いいところを探してあげて」というアドバイスにも、「だって、言うことをきいてくれないんです」。「私にも自分の家族がいて、限界なんです」とも話したという。
教育委員会への報告書やアンケートなど、教師たちが授業以外のことで多忙を極めているのは周知のことだ。評価の面でも、児童の心に寄り添う指導より、テストの平均点など「目に見える成果」が重視されがちだ。
「先生たちのストレスがストレートに、弱い子どもに向かうのだと思う」(成田さん)
悪化する労働環境といびつな評価。学校問題に詳しい弁護士ドットコムの田上嘉一弁護士はこの二つのストレス因子に加え、「教員の孤立」を問題視する。
「担任教師は一国一城の主のようなもの。さまざまな権限を持つため、勘違いして悪用する人も出てくる。どの教師も自分のクラスを守るのに精いっぱいで、互いに助け合う余裕もない」
自分がうまく指導できないと認めると評価が下がるから、周囲には相談しにくく、孤立はいっそう深まる。さらにいえば、団塊世代の教師が一気に退職した07年問題の影響もあって、指導スキルや教育観が十分に継承されていないという指摘もある。
前出の都内公立小学校に勤務する40代の男性教師は、
「先生たちのいじめに対する感性が鈍くなっている」
とも感じている。あるとき、5年生になる女児の間のいさかいの仲裁に悩む20代の後輩教師から相談を受けた。「AがBの悪口言ってたよ」とCがBに告げたことで、BがAをいじめた。男性教師の後輩が厳しく指導したのはAのみ。「それは違うでしょ」と男性教師がアドバイスしても、「もとはAが陰口を言ったのが始まりだし」とピンとこない様子。
「陰口は子どものストレス解消。Cには悪意がある。そこを指導すべきなのですが……」
どうすればいいのか。