●保護者は教師を受容していきなり詰問しない
田上さんが考える改善策はこうだ。
「クラス担任ひとりに何もかも任せるのではなく、横串で各クラスの状況を把握していくような立場の人を増やす必要がある。教師のいじめ行為に対しては、懲戒免職などで終わらせず、その行為が起きた原因を考えるべきです」
成田さんによれば、教師によるいじめ行為に気づいたときに、保護者が講じるべき対策は三つある。
まず、子どもが訴えてきた内容をうのみにせず、クラスメートの保護者などを通じて自分の子ども以外からの情報を集めること。次に、子どもの言葉の裏にあるものにも気を配ること。「教師にいじめられた」と訴えていても、発端は友人関係だったり、自分へのコンプレックスだったり。かまってほしいさみしさが教師の言葉などで増幅されるというケースもある。
最後は、教師にとって上司にあたる校長や教育委員会に、一足飛びに行かないことだ。まずは直接、教師と話す。「いじめてますよね?」などといきなり詰問せず、最初に「いつもお世話になっています」と感謝の言葉から始めること。保護者が教師を受容する態度をみせると、反省の言葉を引き出して解決に導ける確率が高まるという。
本来慕われるべき教師の不適切な行為は、こじれたり放置されたりすることで、子どもを深く傷つける。冒頭の世田谷区の事故も、担任教師が定松君と良好な関係を築き、注意義務を怠らなければ、防げたのではないか。
(ライター・島沢優子)
※AERA 2017年5月15日号