「過度な精神主義に依存するのは組織の末期的症状。日本軍も敗北を重ねるごとにどんどん精神主義が強くなった。どんな作戦も最後は『敢闘精神で頑張れ』と。担当者が物資の補給が不十分だと訴えても上官は『それは君の敢闘精神が欠如しているからだ』と叫んで終わり。論理的な議論が封じられた」

「戦略があいまい」「硬直化した縦割り組織」「ガバナンス不全」。これらは東芝だけの問題ではない──。ソニー出身の経営学者で、戦略論を専門とする長内厚・早稲田大学大学院経営管理研究科教授の指摘も重い。

「日本企業の多くは技術力だけで差別化をはかり、かつてはそれで競争に勝てた。そのため、技術的な成果を出した人が、経営とは何か、戦略とは何かを学ばないまま、社長や取締役になっている。しかし、全体を俯瞰できる統合力と戦略が問われる時代には、それでは適応できない」

 長内教授には、大艦巨砲主義の時代の成功体験に縛られ、飛行機を主力にした制空権がモノをいう時代になっても戦艦大和や武蔵で戦おうとして負けた日本軍の姿が重なって見えるという。

 前出の寺本教授は取材の最後にこう警鐘を鳴らした。

「日本の企業の喫緊の課題は、本当の意味での『経営者』を育成する仕組みづくりです。日本軍の失敗、そして東芝の失敗から日本社会は教訓をつかみとらなければいけない」

(編集部・石臥薫子)

AERA 2017年4月17日号

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