「230万都市の田舎」「ケチで見えっ張り」「排他的」「ミーハー」──。そんなふうに揶揄される名古屋。実際はどうなのか。
「名古屋」と聞くと、あなたは何を想像するだろうか?
東京と大阪という2大ライバル都市の狭間に位置しながら、どちらにも引っ張られることなく独特の文化を誇る日本第3の都市。戦国大名が覇を競った時代から、トヨタが盤石な経済圏を築く現代まで、名古屋人の自信は確かな根拠に裏打ちされている。愛知県は各界で活躍する著名人が輩出しており、それも同郷人のプライドをくすぐる。
しかしその自信が、周囲の目には「上から目線」「自分のことばかり」と映ることもしばしば。「豊田佐吉(トヨタグループ創始者)は静岡出身」との静岡県民の声もあった。
味噌煮込みうどんのように濃厚で、あんかけのようによく絡む。名古屋という巨大な謎を解く鍵は、どこにあるのか。
●都会と田舎あわせもつ
名古屋近郊で生まれ育ち、名古屋市内の病院に勤務する医師の女性(35)は、4年前に結婚した。夫の実家も名古屋市内だ。結婚と同時に、市内に一軒家を購入。資金は親が支援をしてくれた。2年前に出産。夫婦共働きで、子育てをしている。週末には、名古屋近郊に住む自分の親から電話がかかってきて、頻繁に会う。夫の実家にも、月に1回くらいは訪ねていく。
買い物はだいたい栄へ車で行く。名古屋市内でメインの買い物スポットは栄か名駅(名古屋駅)の二択だ。「選択肢がありすぎなくてちょうどいい」のだ。コンパクトな街なので、栄を歩いていると、中高の同級生や大学の同期など知り合いに偶然よく会う。
「名古屋のよいところは、まとまり感。街もまとまっているし、人間関係もまとまっている。同じコミュニティーが続いて、ずっと仲がいい。住んでいると不満はないし、他のところに住みたいとは思いません」
人口230万人を抱える都市の一方で、コミュニティーが狭く地縁や血縁が強い、田舎のような特徴を持つのが名古屋だ。
女性向けの情報紙などを発行する名古屋リビング新聞社の中島幸子さん(53)はこう話す。
「名古屋は都会の良さと田舎の良さをあわせもった街。とても住みやすいですね」
福岡で生まれ育ち、仕事の都合で約20年前に名古屋へ引っ越してきた。来たばかりのころは、名古屋の人は閉鎖的で、外から来た人を警戒している感じがしたが、暮らすうちに、
「いったんなじむと、懐が深くて、住みやすい」
と印象は変わった。