前出の今永さんは名古屋に帰ってきて次の年にマンションを購入。
「名古屋郊外だと1千~2千万円で買えます。市内中心部でも4千万もかかりません。家を買えば、他に特に使うこともないのでたまっていきます」
前出のYさんはこう話す。
「貯蓄をしておけ、というのが我が家の教えです」
子どものころからお年玉は貯金するように親から教えられた。就職してからは、一軒家を購入したいと住宅積立も始めた。毎年海外旅行に行くが、今は実家暮らしということもあり、
「貯蓄はたくさんある」
と明かす。
名古屋市内の大手航空機メーカーに勤務する会社員男性(33)は4年前に結婚、市内の中心部に3LDKの新築マンションを3千万円で購入した。その後も貯蓄を続けているが、
「目的は特にないけれど、貯蓄はするものだと思っている」
という。
目的はなくてもとにかく貯蓄にいそしむ。そのために、「ケチ」といわれてしまうこともあるようだ。
「トヨタの人と合コンをするといつも均等に割り勘。東京の人はおごってくれるのに。稼ぎはいいのに、何であんなにケチなの?」
と、名古屋出身で今は東京に住む会社員女性(30代)は、20代で名古屋に住んでいたころの合コンを振り返り、呆れる。
前出の今永さんはこう話す。
「東京では都心に出かけるとみんながおしゃれをしていますが、名古屋はそうでもない。それに車に乗って出かけることが多いので、特におしゃれをしなくてもデートは成り立ちます」
一方、
「名古屋は生活都市。親の支援を得られやすいし、安定して、気心の知れた人たちがいるので、生活しやすい。高校の同窓会も毎年ありますが、家族で集まることが多いですね」
と話すのは、北名古屋市出身で名古屋市内の大学に通い、仕事の都合で今は京都市内に住む大学教員の男性(41)。両親の実家は、名古屋近郊の農家だ。
「家が大きいので、子どもの頃は親戚一同20人くらいがお正月やお盆に集まった。いとこの結婚式は家で開いて、菓子まきをしました」
●家族親族を大事に
愛知県の婚姻率は東京、沖縄に次ぐ全国3位。出生率も沖縄、滋賀、福岡に次ぐ4位だ。家族やコミュニティーを大切にするという特徴があるのだ。
製造業を背景にした「家業」に支えられた親子の絆、貯蓄や一軒家の所有、車移動だからおしゃれはしないという合理性。
他の都市とは異なる名古屋の独自性は、こういうところから生まれてくると言えそうだ。(編集部・長倉克枝)
※AERA 2017年3月6日号