
「フィンランド・デザイン・ミュージアム」は、デザイン専門の国立美術館だ。フィンランド・デザインに関する作品、資料を収集しており、今回の展覧会も同館が所蔵する4千点余りのマリメッコ・コレクションが元になっている。来日したサヴォライネン館長に、話を聞いた。
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フィンランドにとって、「デザイン」はとても大切です。それは「自由」や「民主主義」と密接な関わりを持っています。デザインは一部の人のものではなく、美しさ、機能性も含めて、あらゆる人が享受すべきもの。いわば「平等性」が大切なのです。こうした考えがあるからこそ、フィンランドではデザインが大切に扱われています。マリメッコで言うならば、締め付けることのないファッションは、女性の体を自由にしました。表面的なカラフルさだけではなく、より本質的なところで、自由を与えたのです。
今回の展覧会の意義はなんといっても、マリメッコの全貌とともに、フィンランドのデザインスタイルも一緒に見ることができる点です。マリメッコは民間の会社ではありますが、非常にユニークな存在で、国家的な資産なのです。
フィンランドは今年、独立100周年を迎えます。第2次世界大戦後は敗戦国として非常に厳しい状況のなかで、私たちは文字通り、一から国をつくりあげてきました。
東欧と西欧の文化のはざまで独自のライフスタイルを作り上げてきた、その歩みが、伝統的なモチーフを現代によみがえらせた、マリメッコのデザインの中にも生きているのです。
(ライター・矢内裕子)
※AERA 2017年2月6日号