マリメッコの創業者、アルミ・ラティアは、デザイナーの個性を尊重する人物だったという。流行に乗り、消費されるデザインではなく、デザイナーの揺るぎない個性から生まれる図案を大切にする。そうした姿勢があるからこそ、マリメッコでは新作を追うのではなく、昔の図案を時代にあわせてアレンジし、多様な展開をさせていけるのだろう。

「デザインは美しく、かつ機能的でなければならない。だからこそ良いデザインはすべての人に行きわたる必要があり、福祉社会の形成にも深く関わっている」 

 と、前出のフィンランド・デザイン・ミュージアム館長、サヴォライネン氏は、インタビューの際に語っていた。

「フィンランド・デザイン」は日本でも人気だが、背景にこうした哲学があることに、どれだけの人が気づいているだろうか。

 さて、マリメッコとコラボレーションしたフィンエアーの機内では、置かれた紙コップやブランケットに描かれた青いウニッコが花畑のように見えるという。

 何げない日常が、デザインによって美しく印象的なものになる。ここにも、フィンランド・デザインの精神が息づいている。(ライター・矢内裕子)

AERA 2017年2月6日号

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