この試合では「フリーで4回転4本」にも挑戦。10月21日からのグランプリシリーズに向けて、こう自分を鼓舞した。
「次の試合ではノーミス、そうでなきゃ羽生結弦じゃない」
トウループ、サルコウ、フリップ、ルッツと4種類を習得し、「フリーで4回転5本」に挑むネイサン・チェン(17、米)、4回転2種類を組み入れた無良崇人(25)、4回転サルコウ2本を入れる田中刑事(21)など、バトルは白熱。ループに挑戦し、認定されるジュニア選手も現れた。
●リスクのほうが大きい
リスクもある。今季のルール改正で、4回転ジャンプで転倒した場合の減点は「マイナス4」(質のマイナス3と転倒のマイナス1)から「マイナス5」になった。4回転トウループの基礎点は10.3だが、転倒すると5.3、回転不足で転倒すると3.0。逆に、質の高い3回転トウループなら得点は最大5.4。未完成のうちに4回転に挑戦するリスクは大きい。
羽生とフェルナンデスのコーチ、ブライアン・オーサーは、
「若手は4回転をたくさん跳べば勝てると思っているかもしれない。しかし結弦とハビエルの300点超を支えるのは、4回転の数ではなく質。4回転のみが対象ではありませんが、質の加点だけで2人とも、ショートで10点、フリーで20点も稼げる。これが王者の戦い方です」
この2トップをどこまで脅かせるか。激戦がスタートする。(ライター・野口美恵)
※AERA 2016年10月24日号