羽生結弦の史上初の4回転ループ成功で幕を開けた今シーズン。宇野昌磨は4回転フリップを決め、本数を増やす選手も続出。どこまで進化するのか。
昨季、4回転を「跳びまくった」男子選手がいた。シニアに上がったばかりでまだあどけなさを残す、中国の金博洋(ジンボーヤン)(19)だ。
最も得点が高いルッツはほぼ100%の成功率。計3種類の4回転を跳び、2016年2月の四大陸選手権では、「ショート2本+フリー4本」を成功させる偉業を達成した。
1988年にカート・ブラウニング(カナダ)が公式戦で初めて4回転トウループを決めたところから、4回転の歴史は始まった。98年にティモシー・ゲーブル(米国)がサルコウに成功。2011年にブランドン・ムロズ(米国)がルッツを成功させるも、以降一度も成功しないまま引退し、4回転はサルコウとトウループの2種類という時代が20年続いた。
●もっときれいに跳べる
この「停滞」を打ち破ったのが金。そして、刺激を受けて新たな金字塔を打ち立てたのが羽生結弦(21)だ。
羽生は、14-15年シーズンまでは「ショート1本+フリー2本」だった4回転を、15-16年シーズンに「ショート2本+フリー3本」に増やした。飛距離も流れもあり、大きな加点が付いた結果、15年末のグランプリファイナルでは、総合330.43点の世界記録を出した。
ハビエル・フェルナンデス(25、スペイン)も16年世界選手権で「ショート2本+フリー3本」に挑戦し、1月の欧州選手権に続き300点超えを果たす。4月には、宇野昌磨(18)が世界初の4回転フリップを成功させた。
そしてこのことが、「ライバルがいるほど頑張れる」という羽生を奮起させ、今季初戦となる9月の国際大会での史上初の4回転ループ成功につながった。
右足で跳び、右足で降りるという片足の跳躍力と回転力に頼るループはタイミングが難しく、アイスショーなどでは成功させながら、公式戦では封印していた大技。試合後には、
「普段はもっときれいに跳べる」
と成功を手放しでは喜ばず、質へのこだわりをみせた。