宮本さんは59歳でサラリーマンを引退。その後も企業のマネジメントシステムの国際規格を評価するISO審査員として働いてきた。1男1女、2人の子どもも巣立ち、第二の人生を楽しもうと考えていた矢先、妻が若年性認知症を発症した。介護に専念していたが、4年前に妻が施設に入ると、かつては両親も含め、家族6人で暮らしていた6LDKの家にぽつんと独り。もったいない、という思いもあった。

「学生さんと支え合う暮らしも、東京ならでは。生活にハリが出ますよ」

 と、宮本さん。「東京ならでは」と宮本さんが語るのは、大学の数の多さだ。東京は国公私立合わせた大学の数が137校(2015年度学校基本調査)と群を抜いて多い。国内にある大学の17.6%を占める。

「大学生」×「独り暮らしのシニア」が東京にある「資産」の新たな活用法だとすれば、サービス付き高齢者向け住宅(サ付き)「ゆいま~る高島平」は、団地の「空き家」×「都市の利便性」という「資産」の組み合わせで実現した。

 ここに移り住んだ一人、高橋和子さん(80)は、以前は世田谷区のマンションで暮らしていた。子どもはなく、5年前に夫が亡くなってから、最期まで安心して暮らせる住まいを探し始めた。あらゆる高齢者施設を見学した上で、自立しながらゆるく「集住」する暮らしを選んだ。

「1棟まるごと老人という施設には入りたくなかった。ここはURの賃貸に入居する人たちの中に交ざるようなスタイル。だからこそ、同じサ付きで入居した人たちとは『同志』という感覚が生まれる。郵便受けでたまに顔を合わせても、ああ、同志だなあって」

 今は、自立した暮らしをめいっぱい楽しんでいると高橋さん。142カ国を旅行し、その数を更新中だ。直近の3カ月は毎月のように、コソボ、韓国、ブラジルへのツアーに参加した。

 旅を続けるためにも体力づくりは怠らない。ストレッチに加え、発声トレーニングにもなる歌の会を毎月2回開催。サ付きの職員がいるフロントスペースを会場に、高橋さんを含むコアメンバー3人が会を主催する。「同志」たちが訪れ、談笑の場にもなっている。

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