
0歳児のうちは家で育児をし、その後に仕事復帰する。そんなささやかな願いがかなわない。厚生労働省が導入を促すという認可保育所の「入園予約制」は、そんな状況を変える一打になるのか。
今年4月、前年の11月に生まれたばかりの生後5カ月の長女を認可保育園に入園させ、仕事に復帰した都内のIT企業に勤める女性(34)は、地方に住む夫の両親からさんざん非難された。
「まだ離乳食も始まっていないうちから保育園なんて」
「もう母乳やめちゃうの」
女性自身も生後5カ月での入園は不本意だったから、それらの言葉が心にぐさり、ぐさりと突き刺さってきた。
「私だって、せっかく育休制度があるんだから1歳ぐらいまで一緒に過ごしたかった。でも、0歳のうちに入園させなければ、保育園に入るのはもっと難しくなる。追い詰められて、そうするしかなかった」
待機児童問題が深刻化し、子どもを保育園に入園させる「保活」も厳しくなる中、保育園の定員は4月入園ですべて埋まり、年度途中での入園は絶望的な状況だ。さらに、1歳児クラスへの入園は、0歳児からの持ち上がりで枠がほぼ埋まってしまい、より厳しくなるため、0歳児4月での入園を選択し、法律では本来、子どもが1歳になる前日まで取れるはずの育児休業を途中で切り上げる人も多い。
●復帰時期見えず戦力外
そんな中、厚生労働省が育休をしっかり取得して、年度途中でも入園できる「入園予約制」の導入を自治体に促すことを決めた。予約制を設ける自治体に対して、保育士の人件費を補助するための予算を来年度の概算要求に盛り込むという。厚労省の担当者は言う。
「親御さんの権利である育児休業を、安心して取れる環境をつくりたい」
ただ、予約制の枠をどう捻出するかが課題だ。担当者によると、保育所定員を超えて入所できる「弾力化枠」での対応を想定しているという。
予約制の導入については、企業側も歓迎する。
「仕事復帰の時期が早めに確定するのは会社側も助かります」
と言うのは、都内のベンチャー企業の人事担当者(35)。昨年も、子どもが1歳になるのに合わせて7月に仕事復帰を予定していた女性から、保育園に落ちたので育休を延長したいという申し出がその1週間前にあった。女性が住む千葉県内の自治体では、入園希望の前月の23日に入園の可否の通知が来る。その後も毎月、「今回も落ちた」との連絡が続き、やっと10月下旬に「来週から復帰できます」と報告があった。この人事担当者は言う。