10日投開票の参院選。最大の焦点は憲法改正の国会発議に必要な3分の2の勢力が改憲勢力で形成されるかどうかだ。低投票率でもし改憲への引き金が引かれたら──。
参院選公示を控えた6月19日。東京・JR吉祥寺駅前で安倍晋三首相が街頭演説に立つと、聴衆の間から「帰れ」コールがわき起こった。動画はネットにアップされ、SNSで瞬く間に拡散し、話題になった。
地元・武蔵野市の民進党系の市議は、これを「新たな動き」と受け止めた。
「東京選挙区の民進党公認候補の街頭演説にも、『野党共闘』のプラカードを持って参集してくれました。見知った顔はなく、今までにない動きです」
とはいえ、こうした反政権の「運動」はその後、目立たなくなった。選挙中盤の今、「どこで、どう動いているのかわからない」(同市議)状況だという。
●昨夏のうねりはどこへ
報道各社の調査で「自民優勢」が伝えられている。特に注目されるのは自民、公明、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党を合わせた「改憲4党」が、非改選の議席を含め、憲法改正の国会発議に必要な3分の2の議席をうかがう情勢にあることだろう。
「一体どうしたんだと思うくらいに、中間層の人たちがどう考えているのかが見えない」(同)
街頭では参院選後の改憲の可能性に力点を置いて訴えているが、有権者の反応は鈍い。昨年夏の安全保障関連法制に対する批判の高まりや、東京電力福島第一原発事故後の脱原発のうねりも勢いを感じられない。民進党国会議員の街頭演説でも、長く立ち止まって聞いてくれる人は少ないというが、その理由は「身内」ともいえるこの市議も承知している。
「アベノミクスを批判し、分厚い中間層をつくるのはいいけど、じゃあどうやってつくるのという話。批判ばかりでは夢を描けないのです」
民進党系市議は、苦笑交じりにこう語る。
「政権批判だけなら共産党のほうがうまいんです。民進党の立場で言うと、本当の敵は(共闘を組む)共産党かもしれない」