●公明党内部の変質
苦悩する民進党とは対照的なのが公明党だ。
「野党連合は脅威を感じさせない」。党幹部はその理由をこう述べる。
「共産党には勢いを感じるが、それ以外の党はまとまりがなく、運動もばらばらです」
「学会員はフル稼働しています」と喜ぶのは九州の創価学会幹部だ。公明党は九州で唯一、福岡選挙区に公認候補を擁立した。震災後間もない熊本や、離島からも福岡に相当の応援が入り、手応えを感じているという。
「自公協力は信頼関係が構築され、成熟期に入っています。官邸主導と草の根の学会員がかみ合った選挙運動は力強い」
そう語る公明党幹部に、憲法が争点にならない理由を尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「切羽詰まった問題とは認識されていません。憲法よりも暮らし、経済でしょう。そうなると『安定』が物を言うのです」
一方、比較政治学が専門の成蹊大学の高安健将教授はこう警鐘を鳴らす。
「政治家や政党を選ぶときに、どういうパッケージで政治が動くのかを意識しなければいけません」
アベノミクスへの肯定的な評価を基準に候補者や政党を選ぶと、憲法改正もパッケージとしてついてくる可能性に留意せよ、というわけだ。
高安教授は、改憲勢力が国会で3分の2を確保すれば、憲法改正の動きはゆっくりかもしれないが、確実に出てくると指摘した上で、違和感を唱える。
「憲法改正の議論は本来、社会が抱える問題の解決や処理のために不可欠だと判断されたときに起きるものです。しかし、現行憲法の何が問題なのか、どの条文を変えるのかはこれから考えましょう、というのは不思議な議論だ」
公明党も改憲には消極的だ。
「うちはあくまでも加憲の立場。改憲は困ります」(党幹部)
集団的自衛権の行使容認をめぐる憲法解釈変更に際しては、公明党内部でも賛否が分かれた。
「集団的自衛権は憲法解釈の問題でしたが、条文変更となると次元が全く違う。もしそういう議論になれば党の根幹や存立にかかわる話になります」(同)