関西の有力私立大学について、現状と未来をさまざまなデータで比較した。伝統の関関同立に加え、旬なのは、一般志願者数で日本一になった近畿大学。産近甲龍からは頭一つ抜け出して、4大学を猛追している。このまま背中をとらえるのか。それとも──。(編集部・古田真梨子)
関西の有力私立大学と言えば、「関関同立」。長く、関西大学(関大)、関西学院大学(関学)、同志社大学、立命館大学の4大学が、他の私立とは一線を画すブランド大学として認知されてきた。
しかし、この関関同立を猛追する大学が現れた。マグロの完全養殖に世界で初めて成功して名をはせた近畿大学だ。関関同立に次ぐ一群として、「産近甲龍(京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学)」と括られていたが、ツイッターなどのSNSを駆使した広報戦略も奏功し、2014年には、一般入試の志願者数が明治大学を抜いて日本一となった。
伝統の関関同立に近大を加えた5大学について、入試難易度、本命率、就職、授業料のデータと、立地や女子率、独自アンケートに基づくイメージで比較したい。
まず、入試難易度から見てみよう。関関同立の入試難易度は、早慶上智の真ん中程度からMARCHと同等くらいまでのレベルに分布する。トップは不動の同志社。4位も、関大の指定席のようになっている。近大はワンランク下の感が否めないが、10年前と比較すると、その差を縮めている。
■立命館「減速」の理由
目立つのは、立命館の減速だ。
立命館は国際関係学部と法学部でそれぞれ大きく難易度を下げた。とりわけ、お家芸だったはずの国際関係学部が、関西圏のトップから転落していることは大きい。何が起きたのか。
立命館は00年、留学生が在学生の半数近くを占める立命館アジア太平洋大学(APU)を大分県別府市に開校。グループ全体として、積極的にグローバル化を進めてきた。14年夏には、オーストラリア国立大学と「共同学士課程」を設置することを決定。海外大学と学士課程のカリキュラムを一から開発する国内初の取り組みに着手している。
国の「スーパーグローバル大学(SGU)創成支援」にも、「グローバル化牽引型(タイプB)」で選出された。同大の陰山英男教授(教育学)は、
「常に時代の流れを先取りしてきたのが立命。特にマレーシアやインドネシアなど、東アジアに出張すると『おっ』とびっくりするくらい認知度がある。結果として、優秀な留学生が集まってきて周囲にいい影響を与えてくれている」
と前置きしたうえで、難易度の変動についてこう話す。
「全国各地に付属校を設置するなど、地元以外からも幅広く学生を集めようとした結果ではないか。多くの受験生になじみができ、可能性を与えることができた。『入りやすい大学』に位置づけられたことで難易度が少し下がったのかもしれない」
確かに、立命館は付属中・高校が大学本部から遠く離れた場所にもある。京都府長岡京市のほかに、1995年に同府宇治市、96年に北海道江別市、07年には滋賀県守山市にも開校。熱心に拡張路線を走ってきたことがわかる。
知名度が上がった結果、難易度が下がるという皮肉な事態が起きているのだ。それはそのまま本命率の低さにもつながっている。立命館の本命率は、今回比較した5大学の中で最も低い35.3%。志願者数と合格者数の多さばかりが目立った。