防衛省が特別ブースを設置した都内の大学の学園祭。自衛官採用説明会や制服によるコスプレ撮影会、DVD上映会などでPRしていた(撮影/作田裕史)
防衛省が特別ブースを設置した都内の大学の学園祭。自衛官採用説明会や制服によるコスプレ撮影会、DVD上映会などでPRしていた(撮影/作田裕史)

 今年度の自衛官の応募状況をみると、各部隊の中核を担う「一般曹候補生」は前年度より約20%減った。若者の“自衛隊離れ”が心配される中、実際に任官した人たちは何を思って任務に当たるのだろうか。

 学生時代に憧れたのは、研究者。防衛大学校を受けた理由は「受験料がタダだったから」。20代後半の幹部自衛官の物静かで哲学者的な風貌は、今もおよそ「らしく」ない。

 西日本の公立高校を卒業。難関国立大学を目指したが、かなわずに浪人。2年目に初めて受けた防大は、受験の「練習」のつもりだった。

 理工学専攻区分で受験。平均倍率10倍以上の狭き門を突破し、見事合格。授業料がかからないばかりか、給与をもらいながら学んだ。

「全国から優秀な人が集まる防大で勉強すれば、自分がめざす研究者になれるかもしれない」

 入学を決めたのも、そんな気持ちだった。高校時代、部活でしごかれていたので集団生活も何とかなると考えた。

 しかし、防大での訓練はその比ではなかった。全寮制で朝から晩まで全体行動。グループの一人でも集合時間に遅れれば全員、腕立て100回。

「教え込まれたのは“できるやつが周りのやつを助けるべきだ”という精神。それは任官した今でも染みついています」

 普通のサラリーマンの父は、自衛官になると決めた息子に反対することはなかった。反応したのは、弟だった。

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