残業や子どもの急な発熱時に、働く母親の助けとなるベビーシッター。しかしベビーシッター料を払うために必須ともいえた割引券が、終了するという。決して安い料金ではないだけに、母親からは悲鳴もあがっている。
金融機関でシステムメンテナンスを担当する女性(42)は、9歳と4歳の女の子を育てている。実家は遠方。残業時の子どもたちの学童や保育園などへの送迎に、ベビーシッターサービスを幾度となく利用してきた。それなのに、1カ月ほど前に、こども未来財団のホームページにこんな報告を発見し驚いた。
「ベビーシッター育児支援事業は、平成27年3月31日をもって終了することとなりました」
女性がいつも頼んでいる会社のベビーシッター利用料は、送迎の場合1時間約2700円と、決して安くはない。そこでありがたいのが、こども未来財団から発行される「ベビーシッター育児支援割引券」だ。利用料金から1回につき1700円の割引が受けられる。
「うちの場合、利用料金は月約3万円になりますが、割引券のおかげで、支払いは半額以下で済んでいます。割引券がなくなれば、月3万円を送迎に払うことになる。痛すぎる出費です」
ベビーシッター育児支援事業は、1994年度にスタートした。割引額は全額、国庫補助金で賄われていて、ここ数年の予算規模は2億円強だ。
割引券を使えるのは、申し込み手続きをした企業などに勤める共働きの従業員で、残業などで0歳~小学3年生の子どもの在宅保育にベビーシッターを利用した場合だ。事業主が児童手当拠出金を納付していることが要件で、公務員や自営業者は使えない。
同財団によると、現在、割引券の発行を受けている企業などは約1300社。ここ数年、年間10万枚前後の利用があり、利用者は増加傾向にあったという。
そんな中で10月30日に突然、今年度での終了が発表された。厚生労働省雇用均等・児童家庭局はこう説明する。
「来年度から開始される子ども・子育て支援新制度でカバーしていく見通しです」
新制度では各種保育施設、ファミリー・サポート・センターや、一時預かり、病児保育などの拡充が図られる。保育の需要を満たすことで、ベビーシッターへのニーズを賄おうとの考えだ。ただ、保育園に入りたいニーズと、保育園に入ったうえでベビーシッターを利用したいというニーズはそもそも違う。
※AERA 2014年12月15日号より抜粋