2児の母にして、乳腺外科医。「飛行機通勤」で東京と高松を往復する。娘たちを置いて平日単身赴任したこともあった。――彼女が働く理由とは。
乳腺外科医の何森(いずもり)亜由美(45)は日帰りの「飛行機通勤」を、4年も続けてきた。月曜日は、自宅がある香川県高松市の空港から朝一番の便で羽田へ向かう。午前10時に、東京のがん研有明病院での診療を開始。患者の検査を受け持ち、若手医師の研修の指導も行う。
専門は、超音波の画像診断。画期的な乳がん検査の手法を見いだし、今年、乳房超音波の診断ガイドラインに、この手法の知見が盛り込まれた。全国から講演や実技指導の依頼が舞い込み、がん研での診療後も、ベテランの検査技師らが勉強会を持ちかけてくる。香川に戻るのはいつも最終便だ。
火、水、木曜は、地元の高松平和病院で乳腺外来を一人で受け持つ。隔週の水曜日は、自ら高速道路を運転して駆けつける徳島県の病院で、手術に入り、金曜日にも診療のため、徳島へ通っている。
大学時代は「カメラ小僧」。白黒の長巻きフィルムをカメラに詰め、自宅で現像もし、白と黒が織り成す世界に没頭した。大学4年生の時、学籍番号順に並ぶと机が隣同士になった晶と結婚した。花形の消化器外科医になった何森は、宿直に呼び出しと、忙しい日々だった。