
首都圏以外の私大で初の首位──。2014年度の私大一般入試の志願者数で、近畿大学(大阪府東大阪市)が全国1位になったのだ。昨年は東京の明治大学、早稲田大学に次ぐ3位だったが、今春は志願者が7462人増えて10万5890人となり、明治10万5512人、早稲田10万5424人を抜いた。
志願者数を伸ばした“立役者”は、「近大マグロ」だ。近大の水産研究所がクロマグロの養殖技術を32年にわたって研究し続け、02年に世界で初めて完全養殖に成功した。さらに約10年。産卵から稚魚の育成まで安定的に行えるようになったことから、13年4月には大阪・梅田駅前のグランフロント大阪、12月には東京・銀座に、近大マグロなどの養殖魚が食べられる料理店「近畿大学水産研究所」をオープンさせた。
注目を集めた。養殖魚の専門店というユニークなコンセプトもあって、テレビや新聞でたびたび報道され、オープンから1年近くたった現在も店の前には行列ができている。
広報部の加藤公代課長代理はこう話す。
「どんなに高度な研究発表であっても、誰からも反応してもらえなければ、極端にいえば意味がないと考えています」
世耕石弘広報部長代理の口癖は、「話題になってなんぼ」。この話題性を重視したPR戦略が近大躍進のカギといえる。
たとえば、地下鉄や鉄道の車内でよく見かける大学の交通広告。多くは、キャンパスの光景や笑顔の学生が写る写真を使い、建学の精神や学部構成を解説するが、近大は、近大マグロやインターネット出願といったユニークな話題に絞ってアピール。大学の基本情報ではない。
「電車の中で広告を見るのは、受験生や保護者だけとは想定していません」(加藤さん)
ターゲットは、むしろ一般の乗客だ。多くの人々の目に触れ、おもしろいと思ってもらうことを重視する。近大の話題がブログのネタやSNSのつぶやきとなり、情報がどんどん拡散していく、PR効果を狙う。
※AERA 2014年3月24日号より抜粋