法政大学●散歩のド素人(2013年4月創設、24人)●月曜日の放課後または日曜日に、主に都内を中心にテーマ(食べ歩き、夜景など)を決め手目的地まで歩く●いろんな学年、学部の人と話すことができ、話題を絶やさないようにするためコミュニケーション能力も上がる。強制参加ではないので時間が空いた日にフラッと参加できる※右から2人目が代表の栗原望さん(撮影/横関一浩)
法政大学
●散歩のド素人(2013年4月創設、24人)
●月曜日の放課後または日曜日に、主に都内を中心にテーマ(食べ歩き、夜景など)を決め手目的地まで歩く
●いろんな学年、学部の人と話すことができ、話題を絶やさないようにするためコミュニケーション能力も上がる。強制参加ではないので時間が空いた日にフラッと参加できる
※右から2人目が代表の栗原望さん(撮影/横関一浩)
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法政大学の散歩サークル「散歩のド素人」の面々(撮影/横関一浩)
法政大学の散歩サークル「散歩のド素人」の面々(撮影/横関一浩)
地図で行き先を確認しながら歩き、昼過ぎには公園の芝生の上で休憩がてらランチも楽しんだ(撮影/横関一浩)
地図で行き先を確認しながら歩き、昼過ぎには公園の芝生の上で休憩がてらランチも楽しんだ(撮影/横関一浩)

 今、都内の大学に「散歩サークル」なるものが増えているらしい。その活動内容とは。

「じゃあ、出発しまーす」

 昨年11月中旬の日曜日、午前10時半。東京・市谷にある法政大学から、集まった6人の学生が挨拶もそこそこに、2列になって歩きだした。目指すは、「とりあえず北西の方角」。細い木の枝を地面に立て、倒れた北西に向かう。

「いつもは事前に目的地を決めるのですが、新たな試みとして枝に委ねることにしました」 と、先頭を歩く法政大学散歩サークル「散歩のド素人」の代表で創設者、文学部2年の栗原望さん。風ならぬ、枝まかせ。十字路に来るたびに枝を倒し、倒れた方角を目指す。

 タッタッタッ……。学生たちの足取りは軽い。JR飯田橋駅前を通り神楽坂を抜け、住宅街をひたすら歩く。「散歩」というより「競歩」に近い。

「ルンルン歩くと思っていたのですが、結構ガチです」と、昨年5月末にサークルに入った法学部1年の原万依子(まいこ)さんは笑う。香川県出身。入学すると面白そうなサークルだと思い、入るとハマった。

 赤信号で止まるたび、先頭の栗原さんを除く5人の並びを入れ替えるので、新たに隣同士になったメンバーとの会話も楽しい。授業のこと、バイトのこと、趣味のこと……。一見、非効率で無駄なようにみえる散歩だが、学ぶことも多い。自宅でゲームをするのが趣味だという文学部2年の竹内茉莉奈(まりな)さんも散歩にハマった一人。

「話題を絶やさないようにするためコミュニケーション能力が上がる。歩き切った達成感もあります」
 
 13時に池袋のサンシャイン60(豊島区)に着くと、「一本締め」でお開きになった。法政だけではない。今、首都圏の大学で「散歩サークル」が次々と誕生しているのだ。早稲田、慶應、明治、東洋、東大、首都大学東京など、私立国公立と広がっている。

 栗原さんは大学に入学するとフットサルのサークルに入った。だが、スケジュールが合わず1年でやめた。何かサークルをやりたいと思いインターネットで検索していると、他大学に散歩サークルがあることを知った。楽だし、コミュニケーションも取れるし、お金もかからない──。早速、ブログを立ち上げ、キャンパス内にポスターも貼ってメンバーを募集した。

 こうして、昨年4月に6人からスタート。メンバーは口コミなどで徐々に増え、今では24人。東京の築地や新宿、高尾山への紅葉狩り。東京スカイツリーの夜景も見にいったという。

AERA 2014年3月10日号より抜粋