「女性は救世主か疫病神か」「出産したら会社を辞めろ」と、一部メディアでは働く女性へのバッシングがかまびすしい。しかし働く女性同士の間にも、相容れない部分があるようだ。
「弔電の文章、どうしたらいいんですか」
半導体メーカーD社の技術職のワーキングマザー(51)は取引先に不幸があった時、弔電や供花の手配を頼んだ同年代の事務職の女性から、細かいことを何度も確認された。
「あなたが頼んだから、あなたに確認してるの」
男性上司からの頼みなら、突っかかってきたりしないのだろう。こんな時、妻が専業主婦の50代男性はたいてい、「ケンカでもしてんの?」と的外れな反応で、「次から僕を使っていいから」と事情をくみ取ってくれるのは、共働きの男性だ。妻が会社で苦労しているのを聞いているからだろう。
「女のヒエラルキーはつまらないからこそ、女だけで解決するには無理がある。普段使えない50代の男性上司でも、ここで一言発してくれるだけで存在価値が出てくるんですが」
金融機関E社の男性部長(50)は、部下の40代の独身女性に課長への昇進を打診した時に初めて、女性の間に流れる深い川に気づいた。
「育児で早く帰る人たちが許せないから、あんな人たちのマネジメントはしたくない」と昇進を断られたのだ。
東レ経営研究所の渥美由喜(なおき)研究部長は、ワーキングマザーの社内での立場を「四面楚歌」と表現するが、最も批判的なのは同世代の女性だ。「子どもの都合で急に休む」「休みや遅刻が多いくせに飲み会には必ずいる」などと、本誌の調査では子どもがいない30~40代の女性の3割が、育児をしながら働く女性を「お荷物だと思う」と回答した。
全体では「お荷物だと思わない」が過半数で、むしろワーキングマザーには寛容にみえるが、リクルートキャリア特別研究員の海老原嗣生さんによると、不満は表面化していないだけでくすぶっている、という。
「育児で短時間しか働かない人と、そのフォローをさせられる人の評価や出世コースがほぼ同じなのはおかしいという本音は、制度や社会的意義を建前にかき消されています」
※AERA 2013年9月23日号