いま「野心」が注目されている。閉塞感溢れる時代の新たなキーワードだ。だが、特に女性は野心家になれば困難がつきまとう。特に結婚や出産といかに折り合いをつけるかは大きな課題だ。
7月にユーザー数2億人を突破した「LINE」。その企画開発の中心にいるのが稲垣あゆみ(30)だ。
「社会にインパクトを与えたい。その思いで仕事をしている」
いまや通信インフラの一つとなったサービスをさらにどう改良するか。稲垣は多くのプロジェクトを掛け持ちで担当する。自分の経験や知識が、困っているメンバーの助けになればと、つい口を出して、気がつくと輪の中心にいることの繰り返しだ。
「自分の意見を言わずにはいられない。何でも言い合えるフラットな組織で働きたかった」
大学在学中から、ベンチャー企業だった楽天や、韓国のIT企業などでインターンを経験した。「成長を体感したい」と、中国のネット企業「百度(バイドゥ)」の日本法人でも働いた。日本の大手企業に就職することはむしろ「リスク」にしか思えなかった。
「成長する組織で新しい価値を生み出すことにしか興味がない」
24歳で結婚。夫は突然海外に飛び出す彼女を、「そういうところがいい」と応援してくれる。「女の野心」を体現するには理解あるパートナーの存在は欠かせないという。だが、出産時期を巡っては悩む。仕事と子育ての両立は未知の世界だ。
資生堂の人事部参事の本多由紀(46)は、管理職になった後、やり残していることがあると感じた。「2人目」の出産。上司に、妊娠に向けて準備に入りたいと申し出た。仕事ではプロとして結果を出すことにこだわりながら、43歳で第2子を出産した。
「ワークもライフも自分でプログラムして、人生を充実させること。これが一番大事なのではないでしょうか」(文中敬称略)
※AERA 2013年8月12-19日号