少子化や受験生の安全志向の影響で、主要私大の今年の入試の志願者数は減少した。ただ、学部単位では増加が見られた。2020年度の受験生の傾向とは。
「全体的に減少したのは14年ぶりです。昨年難化したセンター利用入試を中心に受験者数が大きく減少しました」
河合塾教育情報部の岩瀬香織チーフは言う。「SMART+GCH」(上智大、明治大、青山学院大、立教大、東京理科大、学習院大、中央大、法政大)と「同+関関近立」(同志社大、関西大、関西学院大、近畿大、立命館大)の志願者数は前年比93.3%。河合塾の調査でも主な108私立大学の志願者数は94%と大きく減少している。
ただ全体では減少しても、学部や学科では増加しているケースはある。まずはSMART+GCHの増加した学部の要因を分析していこう。
今年、最も増加したのは、青山学院大のコミュニティ人間科学部。前年比151.7%と大きく増加した。次いで増えたのは、明治大の政治経済学部で142.8%だった。両学部とも昨年の入試倍率(受験者/合格者)は、それぞれ4.7倍と3.0倍と、他の学部と比較して低かった。
また、上智大総合グローバル学部、法政大経営学部で、それぞれ前年比110%を超えた。いずれの学部も昨年は志願者を大きく減らしており、倍率も下がっていた。
「青山学院大や明治大などにどうしても入りたい受験生が、昨年の結果から判断して入りやすいと思われる学部を狙って出願したのでしょう」(岩瀬チーフ)
つまり、学部へのこだわりというより、大学の看板を重視したといえる。SMART+GCHといった大学のブランドの価値は受験生にとって依然大きいのだろう。
ブランド力以外ではどんな要素が出願で重視されているのか。学部の系統で見ると、データサイエンスやAI(人工知能)を学べる情報分野の学部で志願者が増加。河合塾によると、この分野の私大志願者は年々増加しており、15年度に13万7千人だった志願者は19年度には22万3千人にまでなっている。