「企業内教育が主流だった時代は、頭の良い法学部生に対する企業ニーズは高かった。しかし、今の企業はビジネスにつながるスキルを持った人材を求めている。また、受験生のほうでも、例えば経済学部でも経済関係の法律が勉強できるため、そちらで学んだほうが将来に役に立つと考えるのでしょう」(同)

 続いて、関西の私大の学部の志願動向をみていこう。同+関関近立の、増加ランキングでは立命館大の増加が目立つ。経営学部が前年比153.8%、経済学部が122.7%、文学部が113.6%と多くの学部で高い伸びを見せた。大学全体でも107.7%と人気私大で唯一増加している。大学通信の安田賢治常務はこう見る。

「立命館大は全国で入試を行っており、合格者の比率を見ると、近畿圏外が5割を超えている。キャンパスも京都だけではなく、大阪と滋賀にもある。各地で安全志向の学生の受け皿になっているのでしょう。大学の戦略的勝利とも言えます」

 その他には首都圏の有名私大と同じように、情報系の人気が表れている。立命館大情報理工学部が118.6%、関西大システム理工学部が107.0%、近畿大理工学部が105.7%などと伸びている。

 減少ランキングを見ると、最も減ったのは同志社大神学部で55.9%だった。安田常務は「昨年、同志社大で一番倍率が高かったのは、神学部。入りにくい学部として敬遠されたのでしょう」と見る。

 実は、同志社大の神学部は近年、人気を高めていた。神学部といえば、牧師や神父になる人が集まるイメージだが、グローバル人材の教養として宗教を学ぶといったほうが正しいだろう。同大ではキリスト教だけではなく、イスラム教やユダヤ教などについても学び、国際問題の背景を深く理解し、洞察する視点を身につけることができる。志願者は昨年まで4年連続で増加していた。

 また、作家の佐藤優氏が神学部で客員教授を務めている。『同志社大学神学部』『新・リーダーのための教養講義』などの大学に関する書籍も執筆。同大のPRにも一役買っている。人気の背景について同志社大の広報担当者は「佐藤さんの効果は大きい」という。

分野別でみると、さまざまな学問が学べる社会・学際系の減少が目立つ。関西学院大総合政策学部は前年比64.1%、近畿大総合社会学部が67.1%、関西大社会学部が79.9%だった。大学通信の安田常務はこう見る。

「関西では経済や経営などの実学を志向する傾向が強い。社会・学際系は幅広く学べるメリットもあるが、反対に、何を学ぶのかわからないところもある。こうした学部の受験を控えたのではないでしょうか」

 関西学院大の減少も目立つ。11学部中6学部が減少ランキングの上位に入った。大学全体の志願者数を見ても、前年比86%と大きく減っている。数多くの大学がある京阪神間でも、キャンパスへのアクセスがいいとはいえず、志願者が集まらない要因という指摘もある。(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2020年3月13日号より抜粋

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