冒頭の男性は、2019年2月の時点では、普通預金と定期預金を合わせて3877万円程度の貯蓄があった。このほかに、個人年金保険や株式などの金融資産を合わせると約4427万円。

 ところが、1カ月の生活費は5万円ほど赤字が出ていた。その上、春先には小学校に入学する孫のために10万円もするランドセルを購入し、ゴールデンウィークには娘夫婦と孫とともに国内旅行に出かけて旅費のすべては男性が支払った。その後もお金を使い続け、孫にクリスマスプレゼントやお年玉を奮発したところ、1年間で約220万円も貯金が目減りしていたことがわかった。

 しかも、今のペースで使い続けると17年後の83歳で貯金が底をつく計算になった。介護が必要になる時期にお金がない、という悲惨な事態に陥る。

「貯蓄の増減に大きな影響を与えるのは毎月の支出以外にかかる『特別支出』です。住宅ローンを払い終わっても固定資産税や、車を所有していれば車のローンや自動車税、車検などの負担がのしかかってきます。生活スタイルが現役時代と変わってきますので、自宅にいる時間が長くても余計なお金を使ってしまうことがあります」(畠中さん)

■老後破綻するNG支出
(1)暇をつぶすため旅行に行きすぎる
(2)必要のないリフォームにお金をかける
(3)孫への援助が多すぎる
(4)現役時代と同じ生活習慣を送る
(5)車が手放せない

 畠中さんが家計のアドバイスをするなかで、「リタイア貧乏」に陥る人がやってしまいがちなNG支出のひとつは、「旅行」という。

 夫婦で温泉に行くだけならまだしも、子どもや孫まで連れていき、旅費やお土産を買ったお金まで全部負担してしまう人もいるという。また、家にいる時間が長くなるので、バリアフリーにするリフォームよりも、お風呂やキッチンなどの水まわりを快適にしたり、子ども部屋を改装して妻の部屋を作ったりする人も多いという。

「四六時中顔を見ていると喧嘩になりますので、部屋を別々にして、自宅にいても食事以外は別行動をとるようになります。業者にリフォームを依頼すると『リフォームローンを利用して改修工事をすると所得税が軽減される制度が使えますよ』などとセールストークに乗ってしまい、必要以上にお金をかけてしまうケースを見かけます」(同)

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