林:いま若い人、皆さん舞台をやりたがりますよね。若いアイドルで「この子、ちょっと舞台で使ってみたいな」と思う人いますか。ジャニーズの子とか。
生瀬:ジャニーズの子たちはほんとにすごいですけど、僕らみたいな小劇場から来た人間にかかわったほうがいいよ、とは思いますね。
林:蜷川さんが最晩年に演出なさった「青い種子は太陽のなかにある」という音楽劇に、亀梨(和也)さんが主演したんです。蜷川さん、もう車椅子でしたけど。
生瀬:それ僕、拝見してないです。
林:寺山修司さんの初期のすんごくつまんない戯曲で、これは私の勝手な思い込みですけど、こんなつまんない戯曲でも、俺が演出したらこうなるんだ、ということじゃなかったかと思うんです。
生瀬:その作品を見てないからわからないけど、個人的な意見としてですが、蜷川さんでも、つまんない作品もありますよ。
林:私も正直あります。
生瀬:やっぱり、あの三谷(幸喜)さんだって野田(秀樹)さんだって、「おもしろい作品いっぱいあるけど、今回は……」っていうのもあると思います。
林:私の友達の作曲家は、「オペラは20本か30本見てやっと1本ぐらいおもしろいものに当たるぐらいだけど、それでも見なきゃいけないんだ」と言ってます。
生瀬:競馬でも毎回当たったらおもしろくないんですよ。それと一緒。芝居はギャンブルだと思えばいいんです。つまらないのがあって、おもしろいのが際立つ。あと、自分に合うかどうかなんですよ。それを見る前に、「なんでこれがつまらないことがわからなかったのか」と自分を責めたほうがいい(笑)。
林:だけど、劇評がよかったら?
生瀬:その劇評を書いた人をもっと調べて、自分と同じ感覚の劇評家を参考にすればいいんです。競馬の予想屋さんと同じ(笑)。
林:今度の「グッドバイ」は絶対おもしろいですか。
生瀬:えっと……わかんない(笑)。僕はもちろんおもしろいと思ってやってますけど、林さんと僕の感性が近いかどうか。あと、その日がたまたま悪かったということもある。「きのうまでよかったのに、林さんが見に来た日はたまたま調子悪かった」とか。だから僕の人柄で見てください。悪い人じゃないですから(笑)。
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(構成/本誌・松岡かすみ)
※週刊朝日 2020年1月24日号より抜粋