まさに、今の官僚たちに当てはまる。おかしいと思った時に、いつも諦めて異論を述べず、黙々と従っていると、それが当たり前となり、ついには、間違っているということに気付くことさえできなくなる。

 だから、それが徒労に終わるとわかっていても、なお、異論を述べなければならないということだ。

 しかし、よく考えると、これは他人ごとではない。

 私の経験では、官僚が意を決して異論を述べ、声を上げる際、唯一の望みは、マスコミの正しい報道と国民世論の支持だ。

 しかし、「今はとてもそういうことが期待できない」と官僚が考えているとしたら。

 これは、私たち自身の問題だということだ。

 そもそも、国民の権利は、官僚に守ってもらうものでも、政治家に守ってもらうものでもない。自分たちの力で守るものだ。

「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」

 憲法第12条もそう私たちに教えてくれている。

 新年だからといって、「リセット」してはいけない。

週刊朝日  2020年1月17日号

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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