人は人生が終わりに近づいても、欲を捨てるのは簡単ではないと思うのです。あまり、いい人になろうとばかり思っていると、それがかえってストレスになってしまいます。
ですから私はいい人になるのではなく、自分はいい人なんだと勝手に思い込むようにしています。実際、歳をとるとみんな、多かれ少なかれいい人になるものなんです。
自分のことをいい人だと思うには、多少の工夫も必要です。例えば、タクシーに乗ったときには、お釣りを受け取らなかったり、ちょっと多めに支払ったりします。そうすると、運転手さんはみんな喜んでくれます。そのせいで、自分はいい人だと思えるのです。
先日は母校の高校が創立100年を迎え、記念事業のための寄付を募ってきました。私は世間知らずで、どのくらい寄付をしたらいいのか皆目見当がつきません。いつも世話になっている病院の元看護師長に相談すると、すかさず「100万円ね」という答え。
その通りにすると、送られてきた寄付者リストの冒頭に名前が載っていました。言われた通りにしただけなのに、それを見ると、「うん、私はいい人だな」と思うことができました(笑)。
※週刊朝日 2019年12月6日号