加入期間に基づいた額だけになるので、注意が必要だ。

遺族年金をめぐって大変残念なケースがあります。23年会社勤めで、厚生年金保険に加入していた人が脱サラをして自営業(国民年金の第1号被保険者)になってすぐ(2年以内)に死亡。この場合は25年要件を満たしませんので、遺族厚生年金は支給されません。18歳未満の子どもがいれば遺族基礎年金は支給されますが」(同)

 それは残念だ。「夫の脱サラは25年要件を考えてから始めよう」ということか。

「遺族厚生年金と遺族基礎年金には乖離(かいり)がありすぎる」

 こう話す専門家は多い。さらにいえば、自営業の遺族には厳しい。子どもがいなければ、遺族年金はゼロ。老後は自分の老齢基礎年金78万100円(年額)で生きていくしかない。

 厚待遇の(遺族)厚生年金。夫も妻も元会社員ならば、2人の年金は329万6999円と非常に潤っている。夫の死後は、妻は半分強の177万5929円となるが、妻の死後は198万100円となる。やはり夫婦で元気なのが一番豊かだ。

 参考までに妻50歳で夫が亡くなった場合、妻自身が老齢基礎年金をもらうまでは「中高齢寡婦加算」がつく。65歳以降は、妻自身の老齢基礎年金に、自身の老齢厚生年金と遺族厚生年金を合わせた金額がつく。

 やはりほとんどの場合で、夫が残されるケースのほうが、経済的に豊かだ。

 しかし、

「没イチになって、経済的に大変になるのは夫のほう。妻任せだった家事を自分でできない夫は、食事は外食。家事も外注。アッという間に支出が増えます。老後のお金は、入るお金ではなく、出るものまで考えるべきです」

 と話すのは、没イチという言葉を広めた小谷みどりさんだ。

 遺族基礎年金以外の給付手続きも怠らぬように。

 遺族基礎年金の要件に該当しない遺族や、世帯主が亡くなった、ひとり親家庭を支えるための制度もある。「寡婦年金」と「死亡一時金」だ。

「寡婦年金」は国民年金の保険料納付済み期間が一定以上あった夫が年金をもらわずに死亡したときに、10年以上婚姻していた60~64歳の妻に支給される。妻が自分の老齢年金を受給するまでのつなぎのようなものだ。

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