いずれも、かつて任意加入の時代があったため、自身の老齢基礎年金が低額になることが多い会社員の妻への配慮として設けられている。

 ここで注意点がある。

「振替加算」は、妻が65歳時点で夫が生きていないともらえない。夫には65歳まで生きてほしい、ということになる。

 二つ目は夫70歳(元会社員)、妻59歳(専業主婦)のケースだ。

 夫が70歳で亡くなった直後の妻の年金額は、遺族厚生年金と、妻が65歳になるまでもらえる「中高齢寡婦加算」の合計で、148万5100円。だが、妻が65歳になると「中高齢寡婦加算」がなくなる代わりに自分の老齢基礎年金の受給が始まり、これに遺族厚生年金の基本額を加えた合計が168万100円となる。結果的に65歳以降のほうが増えているのがわかるだろう(「経過的寡婦加算」は昭和31年4月1日生まれまでの人につくので、この妻にはなし)。

「中高齢寡婦加算」とは、夫が死亡したときに40歳以上で子がいない妻、または夫死亡時は40歳未満で子がいたが、その後、子が18歳になり遺族基礎年金を受け取れなくなった40歳以上の妻が65歳になるまで加算される給付金だ。

 一方、妻が死んだ場合、夫は65歳未満の妻がいることで加算される「加給年金」(39万100円)を引いた金額の自分の年金だけで生きていくことになる(198万100円)。

 ここで、遺族厚生年金の受給要件25年を改めて、説明しよう。

 現役会社員(厚生年金の被保険者)が亡くなった場合、(対象となる遺族が生計維持基準を満たしている限りは)無条件で、遺族厚生年金が支給される。このとき、厚生年金の加入が25年未満であっても、25年間加入してきたものとみなし、その額が計算される。これを「短期要件」という。極端な例だが、加入1カ月であっても保障される。

■退職していても25年で受給

 では、すでに退職している場合はどうだろうか。

「遺族厚生年金の25年要件は厚生年金保険の加入期間だけでなく国民年金の第1号被保険者、第3号被保険者の期間を通算してカウントしますから、あわせて25年間加入していれば、遺族厚生年金はもらえます」(武田さん)

次のページ