西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、国際化の時代に日本の野球界がどう成長していくべきかを説く。
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前回のコラムで、野球の国際大会であるプレミア12の大会形式の複雑さ、1次ラウンドがメキシコ、台湾、韓国で行われたことで、大会序盤の盛り上がりを心配した。だが、ようやく日本で上位の6チームが集まっての2次ラウンドが行われるようになって、徐々に熱気を感じられるようになった。
よく、代表チームの国際大会で真剣に取り組んでいるのはアジア諸国だけだという声がある。米国や中南米の国々は、メジャーリーグの選手が出ていなかったりする。選手選考だけ見れば「ベストチーム」を組めていないのは、誰の目にも明らかだ。しかし、だ。選手たちの1球、1プレーにかける思いはどの国も一緒で選手個々の思いは強い。負けてもいいなんて思っている選手は誰もいない。その思いはテレビ越しでも十二分に伝わってくる。
日本だってベストメンバーを組めていない。ソフトバンクの千賀滉大も巨人の菅野智之もいない。ファンの方たちが「ベストメンバーじゃないから」と関心をなくす声がある一方で、球場に足を運び、もしくはテレビの前で必死に応援してくれるファンがいる。その人数が少なかろうが、多かろうが、選手は今できる全力プレーで応えていくしかない。ファンの方々、そして世界の野球ファンに共感を覚えてもらうことの積み重ねなくして、大会の格式を上げ、サッカーやラグビーのような世界大会には発展していかないと思う。
話を移すが、今年のオフは海外FA権を行使した西武の秋山翔吾だけでなく、DeNAの筒香嘉智、広島の菊池涼介がポスティングシステムでのメジャー移籍を目指すことになった。5年ほど前までは「スター選手の海外流出」といって日本球界が騒いだが、もはや時代は変わった。才能あふれる選手に対し、選手が「今メジャーに行きたい」と思う適齢期に球団が出してあげるのも、一つの役目である。日本球界からメジャーで多くの選手が活躍して日本の良さをアピールしてくれれば、逆に「日本でプレーしたい」と思う世界各国の選手も出てくる。代表だけが国際化するのではなく、選手をメジャーに送り出すことで球団の知名度を上げ、世界各国の才能を集める。そんな時代にこれから入ってくるのかもしれない。