そんなある日、ラグビー好きのスタッフがハカの話をしてくれた。野蛮さを剥き出しにした男たちの踊りだ。この歌詞が素晴らしいのだという。

 カマテ! カマテ!と野太い声ではじまる歌は、こんな内容だ。

「私は死ぬ! 私は死ぬ! 私は生きる! 私は生きる! 見よこの勇者を! この毛深い男が太陽を呼び輝かせ! 一歩上へ! さらに一歩上へ!」

 目をむき、小鼻を膨らまし吠えるように歌い大地を踏みしめる。実際にやってみると、心の中に真っ直ぐな野蛮が生まれ、とにかく太陽を昇らせてみせるぜ!みたいな気分になるのだった。なにこれ、すごい。希望が持てない社会で、自分たちが得るべき力を手にしたような気分だ。

「これ、シャカ(社歌)にしましょう!」

 誰かが思いつきで言ったが、まじでそうしましょう!と盛り上がった。暇でよかったのか、悪かったのか……。というわけで、我が社はハカを社歌にして、平和な時代を諦めず、多少の野蛮を胸に秘めることを決意。闇や暴力や冷たい支配に死ぬ。けど生きよう。

週刊朝日  2019年11月15日号

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