林:でも、お別れになったんですね。私、コピーライターをしてたとき、「あれが由紀さおりさんの旦那さんだった人だよ」って言われて、そうなんだと思ってマジマジと見た記憶があります(笑)。ハンサムな方だったという印象でした。
由紀:笑顔が素敵でしたね。ピンク・マルティーニというアメリカの人気バンドとコラボして40周年のアルバムをつくったんですけど、そのときのプロデューサーが発掘した韓国の歌い手さんのライブを見に行ったら、そこに彼がいたの。みんな慌てちゃってね。私がいて“元亭”もいるわけだから。みんなに気をつかわせちゃ悪いなと思って、「お元気ですか」って私が彼のテーブルに行って、座って一緒にライブを見たんです。
林:まあ、大人の対応(笑)。
由紀:彼の事務所があるマンションに私の知人がいたので、そのあとにも偶然に会ったりして、「あのアルバムよかったね」って言ってくださって、それが最後だったかな。去年、お亡くなりになりました。
林:そうなんですか。
由紀:そのあとに、彼の追悼文を集めた本ができて、弟さんから私のところに送られてきたんです。私はまだ読んでないんですけど、弟さんに電話をしたんです。「私は幼かったのよ。だからご苦労かけちゃって」と言ったら、弟さんが「それを聞いたら兄貴は喜ぶと思います」って。「今、私が歌を歌っていく姿勢は、あの人から教わったことが生きてると思うわ」と言ったら、「ああ、それはよかった」と言ってくださいました。
林:そうですか。いいお話ですね。
由紀:ご本を送っていただいたことがきっかけでそんなお話ができたんです。はじめは手紙を書こうと思ったんですけど、ペンを持ってもなかなか進まないんですよ。やっぱり残るのはイヤだなと思って電話にしたんです。
林:わかります。私も、昔出したラブレターを持っていられたらどうしようかと思いますから(笑)。ドラマとか映画のご予定は何かおありなんですか。
由紀:「ブルーヘブンを君に」という映画に主演します。岐阜の大垣を舞台にした地方創生ムービーで、ブルーヘブンという青いバラをつくっているおばちゃまがモデルで、その方を私がやります。来年のバラのシーズンに公開されると思います。
林:楽しみです。由紀さん、さっきスタッフの方に聞いたら、電車にお乗りになるそうですね。
由紀:はい、普通に乗ります。
林:気づかれません?
由紀:ボディーのマッサージとかのメンテナンスに通うのに電車のほうが便利なんです。この前は日傘を持ってスッピンで地下鉄に乗って、お姉ちゃんと二人でペチャクチャおしゃべりして、「降りなきゃ」って降りようとしたら、前にいたおじさんが「由紀さん、傘忘れてますよ」(笑)。
林:わかってたんですね(笑)。
由紀:「スッピンだったのにね」って二人で笑っちゃった(笑)。
林:そのお声でわかっちゃうんじゃないですか。
由紀:そうかもね。タクシーに乗って「どこそこまで」って言うと、「あ、由紀さんですね」ってわかっちゃうから(笑)。
林:うふふ。これからのご活躍も楽しみに応援させていただきます。
構成 本誌・松岡かすみ
※週刊朝日 2019年11月8日号