SNSの影響力がますます大きくなったのも、今年の特徴のひとつ。
「“タピる・タピ活”や“#KuToo”、ドラマの“あな番”が後半に視聴率が上がっていったことにも、SNSの力が大きく関係しています。また、“ワークマンプラス”も、新たな商品を開発するのではなく、現場で使われていた商品をSNSによる口コミでヒットさせました」(牛窪さん)
SNSの浸透に関しては、功罪両面があると石原さんは指摘する。
「“あおり運転”や“バイトテロ”の動画のように、もともとあった問題が、爆発的に拡散されるようになりました。しかし、ほんとにささいな落ち度のようなことを、わざわざ指摘して、“正義の側に立つ快感”を知ってしまった人々もいます。『表現の不自由展』もそのひとつの表れです。常に誰かが何かに怒っている、しかも結構ささいなことでも騒動になり、何事にもあまり楽観的ではいけないというムードにもなりました」
そのうえで次々起こるスキャンダルに、
「いっせいに起こって、また次のスキャンダルへ……そこに閉塞(へいそく)感を感じるというか、エネルギーを無駄遣いしている印象はあります。一般の人のルサンチマン(弱者による怨恨[えんこん]、怒り)を感じます」
牛窪さんは、スマホが生活スタイルの中心になっていることも、その原因ではないかと分析する。
「テレビと違ってスマホの動画は、好きな場所、好きな時間に好きな角度で、ニュースや映像を見ることができます。だから自然と上から目線になると、ビジネス書評家の土井英司さんに伺いました。感情移入するよりも、批評家感覚で俯瞰してしまうんですね。小泉進次郎さんの一連の“進次郎ポエム”や“セクシー発言”、一連の“闇営業”問題なども、一般の読者や視聴者の論争によって広がった感があります」
だから、見せ方がとても重要な時代になったのだ、と指摘する。
「進次郎さんの発言や“表現の不自由展”の問題などは、批評する人が少なければ、ここまで大きな注目を浴びなかったのではないか、という気もします」