東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
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弾力的な救援陣の起用で勝利を重ねる巨人・原監督 (c)朝日新聞社
弾力的な救援陣の起用で勝利を重ねる巨人・原監督 (c)朝日新聞社

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、投手の起用法について語る。

【弾力的な救援陣の起用で勝利を重ねる巨人・原監督】

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 前半戦が終わって気付いてみたら、セ・リーグは巨人が独走態勢に入った。もっと混戦状態のまま8月、9月を迎えてほしいが、突っ走ってしまうかもね。

 2位以下がすべて借金を背負うというような、1強5弱の図式になると、首位チームはすごく戦いやすくなる。この差を8月下旬までキープできれば、2位以下は追うことを事実上あきらめる。昔は優勝チームしか、日本シリーズに進めなかったが、今はクライマックスシリーズがある。他球団は3位以内を死守する戦いに変わっていく。

 巨人からすれば、追ってくるチームがなければ「どの球団から勝利しても1勝は1勝」という意識で臨めるし、先発ローテーションを崩す必要もなくなる。「1試合1試合、しっかり戦う」ことだけに集中すればいい。

 昨年もろかった僅差(きんさ)で勝利をもぎとれるようになった。今季の巨人は前半戦で1点差試合に13勝7敗。早くも昨年の12勝(24敗)を上回った。開幕前に私は巨人が優勝するための条件として救援陣の整備を挙げたが、原監督の弾力的な起用、操縦術は見事であると感じている。

 戦術、起用法にガチガチの型というものは必要ない。近年、日本にも浸透した「ブルペンデー(救援陣で1試合をまかなう)」や「オープナー(救援投手を初回だけ登板させ、二回から本来の先発投手を登板させる)」などの戦術があるが、試合終盤の投手起用だって同じだ。「セットアッパー」「クローザー」に絶対的な力がある投手がいるなら問題ないが、いないなら終盤の投手起用もフレキシブルでいい。巨人は安定感が増した中川を「救援投手のジョーカー」として起用する。クリーンアップを迎える八回が重要だと思えば投入し、九回が大事だと思えば九回に起用する。

 よく、救援陣の役割が明確でないと、準備の負担が増すと言われるが、そうではない。決断する監督、投手コーチが「こういうシチュエーションになったら迷わず行かせる」と早めに伝えていれば問題ない。九回に向けて準備するか、八回に向けて準備するかの違いだ。要は監督が腹をくくれるかどうかだ。「勝利の方程式」というのは、絶対的なものがある場合は強いが、ないなら方程式を作らず、相手に起用の順番すらわからなくさせるのも手。強固な方程式ほど、そのパーツが故障などで失われた時に、機能停止となってしまう。

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