相続について悩みを抱える人も多いだろう。生前の対応の仕方によっては、残された親族の揉め事につながりかねない。7月1日から改正された新しい相続ルールで対策しよう。ライター・森田聡子氏が取材した。
【イラストで見る】ケース2 良かれと思った遺言で妻が息子と断絶
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■ケース1 自宅を相続した子が妻を追い出す
東京都の女性(82)は昨年、長男(58)夫婦と一緒に暮らしていた自宅を出て、次男(53)夫婦の元に身を寄せた。
「きっかけは主人が亡くなったことです。以前から長男の嫁(55)とは相性が悪く、居住スペースは私たち夫婦が1階、長男一家が2階に分かれて食事も別々でした。それでも主人が元気なうちは波風立てずにやっていたんです」
嫁の“姑いびり”が始まったのは、亡夫の四十九日法要を終えた後。最初はゴミの出し方が悪いといった些細なことだった。やがて社会人の孫娘(25)と一緒になって「おばあちゃんは臭う」と言い、女性を避けるようになったという。
半年後、長男から切り出されたのは、「次男の家に行ってくれないか」という提案だった。
「嫁が長男をけしかけたに違いありません。はらわたが煮えくり返る思いでしたが、長男と次男との間で話がついていると聞き、受け入れるしかなかったんです」
とはいえ、次男夫婦には2人の子どもがいて、住まいの賃貸マンション(3LDK)は元より手狭な状態だ。
「今、次男の嫁(53)に頼んで老人ホームを探してもらっています。もともと私の介護で子どもの手を煩わせたくはなかったので、いいところが見つかれば……」
体が元気なのが幸いと気丈に話す女性だが、うつむきがちな顔には疲労の色が濃い。
法律事務所アルシエンの弁護士、武内優宏さんは、多数の相続案件を扱った経験から、「子どもを全面的に信用しないほうがいい」と注意を促す。
「自宅を相続した子どもが母親を追い出して自宅を売却し、そのお金でマンションを購入して妻子と引っ越したというケースもあります」