しかし、妻に良かれと思って書いた遺言書が一方的なものであれば、結果的に妻や子を不幸にすることもある。先の女性のようなケースでは、子どもには本来もらえるべき遺留分(法定相続分の2分の1)が認められており、妻に対して遺留分の支払いを請求してくる可能性もゼロではない。
「『妻に全財産を相続させる』という遺言書は、子どもの不満を引き出しかねません。生前に子どもの同意を得ておくことが望ましい。子どもから遺留分を請求されそうな場合は、遺言書で妻に自宅を遺贈するのも一つの方法です」と言うのは、相続対策の専門会社・夢相続の曽根恵子代表だ。
7月から施行された「結婚20年以上が経過した夫婦間の自宅不動産の贈与・遺贈は原則として特別受益には当たらない」という改正を利用することで、法定相続分の相続を前提にすると、この場合、妻は自宅以外の財産の2分の1を手にすることができる。
「その際は遺言書を書いて遺贈する形にしたほうが、生前贈与よりも不動産登記にかかる費用(不動産取得税・登録免許税)の負担が少なくて済みます」(曽根代表)
(ライター・森田聡子)
※週刊朝日 2019年7月26日号より抜粋