各地の年金事務所では相談を受け付けている。夜まで対応しているところもあるので、電話で予約してから行けばスムーズだ (撮影/多田敏男)
各地の年金事務所では相談を受け付けている。夜まで対応しているところもあるので、電話で予約してから行けばスムーズだ (撮影/多田敏男)
国民年金の被保険者の種類 (週刊朝日2019年6月14日号より)
国民年金の被保険者の種類 (週刊朝日2019年6月14日号より)

 年金大削減の標的になっているのが専業主婦だ。会社員の妻らが相当する、「第3号被保険者」は約870万人いる。夫が厚生年金に加入していれば扶養家族の妻も国民年金に加入したとみなされ、保険料を負担しなくても年金を受け取れる。

【狙い撃ちされるのは…?国民年金の被保険者の種類一覧はこちら】

 政府は、この第3号被保険者の対象を狭めてきた。16年からはパート労働者について、従業員数501人以上の企業で週20時間以上働き年収が106万円以上といった条件に当てはまれば、厚生年金に加入しなければならなくなった。「106万円の壁」を超えると、保険料の負担増などで手取りが減ってしまう。

 政府は基準をさらに82万円程度まで引き下げることも検討している。より多くのパートを厚生年金に加入させ、保険料を増やすもくろみだ。

 政府は保険料を本人が負担していないことを理由に、第3号被保険者を問題視。「無職の専業主婦が年金にただ乗りしている」といった乱暴な見方も一部にある。働く女性との不公平感をあおることで、制度の廃止も視野に入れているようだ。

 ただ、専業主婦は家事や子育てを含め社会に貢献している。家庭という単位でみれば、夫が第2号被保険者として妻の分まで保険料を負担していると見ることもできる。専業主婦をことさら狙い撃ちするような改悪には、多くの女性は納得できないはずだ。選挙で民意を示すなど、政府に対抗することもできる。

 とはいえ、年金財政が苦しいのも事実。金融庁が5月にまとめた老後の資産形成に関する指針案では、公的年金の限界を次のように認めている。

「年金の給付水準が今までと同等のものであると期待することは難しい。今後は、公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある」

 実際、19年度は公的年金の支給額を抑える「マクロ経済スライド」が4年ぶりに発動された。今回の発動は15年に続き2回目で、本来0.6%上がるはずの支給額が0.1%に抑えられた。

 専業主婦に限らず、誰もが公的年金に頼れない時代が来そうなのだ。生き抜くためには、「自助努力」しかない。老後に備え、早めの資産形成に取り組もう。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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