「恐ろしいのは、夫が70歳のときに200万円かけて住宅をリフォームする以外は、お金がかかるイベント費用を見込んでいない点です。旅行もしない、自動車もない、大きな病気もしない……それなのに、こんな結果になってしまうんです」(同)

 人生に潤いを求めたり、病気で入院したりすると、破綻時期はさらに早まる。いずれにせよ、これまで「85歳まで」などとしてきたプランを少し延ばすと、「アウト」になってしまうのだ。

 人生100年時代をはやらせたベストセラー、『ライフ・シフト』から2年余。その言葉は今や高齢社会そのもののキャッチフレーズになったが、ここに来て、その「100年」を実際のライフプランやマネープランに落とし込む動きが出てきている。

 目立つのは、「厳しい現実」を示すものばかりだ。

 お金の専門家集団、日本FP協会が発行する、老後準備のための一般向け小冊子「60代から始めるマネー&ライフプラン」と「今からはじめるリタイアメントプランニング」。この二つに4月の改訂版から新たな「折り込み付録」がついた。

 内容は、冒頭の井戸さんが行ったシミュレーションと同様のものだ。細かい設定は省くが、ともに65歳でリタイアする会社員を想定して家計の長期予想を行っている。結果は、2500万円、3千万円の貯蓄があっても破綻してしまうというシビアなもの。もちろん家計の長期予想表つきだ。

「今からはじめる~」には、こうある。

「旧世代の典型的なライフプランで考えると、今の50代がセカンドライフを乗り切ることは難しくなることが予想されます」

 実は井戸さんのシミュレーションも、同協会の会報「Journal of Financial Planning」4月号の特集記事向けに行われたものだ。特集の内容は後述するが、同協会の伊藤宏一専務理事はこう言う。

「スローガン的に『人生100年時代』を唱えるだけでなく、個人それぞれが具体的にシミュレーションして現実をリアルに実感し、その上でどうするかを考えてほしいのです。今までどおりでは、お金は足りなくなってしまいますから」

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