百貨店の催事場で20人も座ればいっぱいになるスペースに、50人以上の女性が集まった。女性器のケアの話とは、ずばり性の話だ。会場の反応をみながら恐る恐る話しはじめたのだけど、理系の森田さんがクリトリスの構造を生物学的に語りはじめた頃から会場の空気が一気に熱くなった。昼の百貨店にはほぼ女性客しかいない。コスメ売り場に近い会場は豊かな香りと色彩に満ちている。性を語るのに完璧に安全な空間だった。そこで私たちははじかれたように、具体的に性を語ったのだった。膣が酸性で守られていること、クリトリスと言われている外に出ている突起は実はクリトリスの一部で大部分は中に埋まっていること、自分の身体を知ることの意味、女性器への尊厳を取り戻す力。わお! こんな話、百貨店で語られたことあった?
語り終えた後、何人もの女性が話しかけてくれた。「こんな話を聞きたかった。性のこと、もっと考えたい」と目をキラキラさせて。
女性たちの自由な語り。そんな私たちは言葉によって自分を取り戻し、世界を築いていく。サンパウロの街で声をあげる女性たち、日本の百貨店で性を語る私たち。私たちはつながっているのだ。
※週刊朝日 2019年6月7日号