作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は意外な場所で広がる性の議論について。
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先日、ブラジルでセックスグッズショップを経営しているという女性が訪ねてきた。サンパウロのフェミニズムの勉強会でラブピースクラブ(私のお店です)を知ったという。「ブラジルより性差別が厳しい日本で、こんなお店があるなんて!」と驚かれたが、私もブラジルでラブピのことが語られているなんて、ビックリだ。というより「日本はブラジルより性差別」と認識されていることに驚いた。そうなのか!
ブラジルの政治家で、レズビアンであることを公表していたフェミニストのマリエル・フランコ氏が銃撃されたのは去年。彼女の死をきっかけに、近年声が大きくなりつつあったフェミニズムの勢いが増しているという。女性たちが中絶や性暴力問題に声をあげている。性に関する議論も活発だ。ちなみに経済格差などのジェンダーギャップ指数をみると、ここ何年もブラジルの方が日本よりましだ。
私たちの話は尽きなかった。女と女の間にも国境はある。少なくとも今の日本でフェミニストが銃殺されるとは考えにくい。それでも女でいることを惨めに感じさせる要素がゴロゴロと転がっている日本社会。どちらも性差別社会であることは変わらない。そんな世界で呼吸する女性たちの共通言語は豊富だ。#MeTooの話、セックスの話、仕事の話、そうだいつか一緒に仕事しようよ、ブラジルでワークショップする? そんな言葉を交わしながら、世界の色がキュッと濃くなっていくような気がした。話した分だけ、世界は広がり私たちは自由になれる。
数日後、某百貨店でワークショップの機会があった。最近、デリケートゾーンケア用品の売れ行きがいい。この日は、女性の体についての著作の多い森田敦子さんと、女性器のケアについて話すことになっていた。