メインの顧問先となる素材メーカーとは、3年間契約が続いている。社員100人程度の中小企業ながら新規事業を展開しようとしていた。素材メーカーが持つ技術を旧知の国立大教授につなぎ、新商品開発に導いている。

「ようやく特許が取れそうな技術が出てきました」(井澤さん)

 この素材メーカーへは月2回通う。ほかの3社はそれぞれ月1~2回程度だ。

「会社へ行くのは限られた日ですが、会議に出るのにも準備が必要です。検討すべき案件は、毎日のように出てきます。素材の展示会をのぞいたり、学会に出て『大学人脈』のメンテナンスをしたりする時間を入れると、月10日程度はフルタイムで働いている感じです」(同)

「i‐common」によると、登録者は今年3月末で累計1万2300人に上る。出身別の割合は「電気・電子・機械系メーカー」が28%、「素材・食品メーカー」「IT・通信・インターネット」がともに12%など。年代別では、70歳以上10%、65~69歳29%、60~64歳28%で、60歳以上が約7割を占める。佐々木健一朗マネジャーが言う。

「大企業の管理職経験者が多いですね。何でもやってきたゼネラリストより、井澤さんのようなスペシャリストが目立ちます」

 就職情報大手「マイナビ」の顧問事業「マイナビ顧問」も登録者は増えていて、セカンドキャリアを考えている50代後半から60代が多いという。東京地区の営業課長が言う。

「管理職としてのご経験が豊富な方ばかりが求められているわけではありません。農業関連のベンチャー企業が、試作機までできていた機械をどう生産していくかで悩んでいたのですが、農業機械の開発経験があり生産現場も熟知しているベテラン技術者を派遣したところ、大量生産の方向へ進み始めました。そんな成功事例が増えています」

 ソニーでエンターテインメント事業を長く経験し、現在は自ら10社以上の顧問を務める齋藤利勝さん(50)によると、「各社の登録人数を合わせると延べ約10万人になる」とのことだ。

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